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2017.01.04 Wednesday

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    マリア・ワルトルタ『聖母マリアの詩』上より

    2013.06.15 Saturday

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      44 ベトレへムへの旅

      群衆で雑踏する街道を見る。家財道具と人を載せて行くろば、戻るろば、人が乗り物に拍車をかけ、歩いている人は、寒いので足を早める。空気は済んで乾燥して、晴天ではあるが真冬の肌を刺す寒さである。裸の畑はいっそう広々として見え、牧場には冬風に焼けたような短い草しかない。それでも牧場に羊たちは、何かの糧を求め、ゆっくりと昇る太陽を探す。この小さな動物も寒さのために身を寄せあっている。顔を上げて鳴き”寒いから早く来い”と言うかのように太陽の方を見る。このあたりは、波打つ丘陵地帯である。いくらか草の多い盆地、小さい谷や丘が並び、道はその真ん中を南東の方向に向かっている。
      マリアは、灰色の子ろばに乗っている。重いマントにすっぽりくるまって、鞍の前の方にヘブロンへの旅の時に見たあの道具と箱を載せている。
      ヨゼフは手綱をとって歩いている。
      「疲れたか?」とたびたび聞く。
      マリアはほほえみながら「いいえ」と言う。三度目に「歩いている、あなたの方こそお疲れでしょう」と言い加える。
      「おお、私のことか。私にとっては何でもない。ただ、もう一頭のろばを調達できたなら、あなたも少しは楽に、旅ももっと早くできたはずだったのに。しかし、どうしても見つけられなかった。まあ、元気を出してください。直にベトレへムへ着く。その山の向こうにエフラタがある」
      それから沈黙が続く。マリアは話さない時には、心の祈りに専念しているようである。自分の考えごとに柔和にほほえみ、群衆を見ても、男か女か、老人か羊飼いか、金持ちか貧乏人か気がつかず、自分だけがみているものにとらわれている。
      「寒くないか?」とヨゼフは風が吹き出したので聞く。
      「いいえ。ありがとう」
      しかし、ヨゼフは信用しない。小ろばのわきに下がっているサンダルを履いたマリアの足にふれる。その足は、長い服の裾からちょっとしか出ていないが、冷たいと感じたようである。ちょっと頭を振って、肩から斜めに背負っていた毛布を外して、マリアの足を包み、膝の上まで伸ばし、毛は毛布とマントの下で暖められるようにする。
      左手の牧場から右の方の牧場に、渡ろうとする羊の群れが道を横ぎる。 
      ヨゼフは、その群れを連れている羊飼いを見つけ、その人に何か耳打ちする。羊飼いはうなずく。ヨゼフは小ろばの手綱を引いて群れについて牧場へ行く。羊飼いは、肩にかけている袋から荒削りの椀を出して、乳房のよく張っている雌羊の乳をしぼり、ヨゼフは乳で一杯になった椀を、マリアに渡す。
      「神は、お二人を祝福しますように」とマリアが言う。
      「あなたを、あなたの愛のために。あなたを、あなたの慈悲のために。あなたのために祈ります」
      「遠くから来たのか?」
      「ナザレトから」とヨゼフは答える。
      「行くところは?」
      「ベトレへムです」

      あかし書房 フェデリコ・バルバロ訳 マリア・ワルトルタ『聖母マリアの詩』上より